「2012年J1序盤戦、ガンバ大阪の崩壊及び再建における一考察(その2)。」

 こんにちは。愛球人と申します。

 

 「愛球人ホームページ。」、第13回のブログエントリーの論題は、「2012年J1序盤戦、ガンバ大阪の崩壊及び再建における一考察。」です。

 

 実質的には、ブログエントリーの本論の12回目になります。そして、サッカーブログエントリーの4回目になります。

 今回は、掲示版とのコラボエントリーの3回目、という位置付けです。今回は、「議論するエントリー」と「感じることを伝えながら読者と意見交換をもしたいエントリー」の中間型という位置付けになるかなと思います。

 今回は、とても長い文章になるので、(その1)(その2)(その3)(その4)に分割して執筆させて頂きます。

 

 ブログ本体については、コメント欄は設けません。その一方で、読者との議論、意見交換的な意味付けとして、掲示板にてコメント欄を設けさせて頂く感じです。

 私のHPにおけるブログは、過激な内容がどうしても多くなることかと思いますが、今回は、とりわけ過激になってしまうかな、と正直感じております。読者の中には、私の考えに共感できない、と考える人間も少なからずいるかなと思いますが、こういう考えもあるんだ、と解釈して御拝読して頂けると、とても有難く思います。

 

 では、(その1)の続きから、考察を始めます。

 恐らく、主観全開になるであろうことを御理解頂けますと、とても有難く思います。

 

 

 (図解2)2012年、G大阪崩壊の諸要因(概要的私見)。

 

 [1]西野朗政権終焉以前からの問題。

 (1)「黄金の6人」の高齢化及びそれによる衰え(遠藤、橋本英、二川、明神、加地、山口智)。

 (2)世代交代の遅れ。特に下部組織上がりの若手、中堅が思うように成長できていない(平井、下平、大塚、内田達、等が挙げられるが、総じて定位置を手中にできていない)。

 (3)外国人FWへの依存度の増大感(外国人FWの夏場での中東電撃移籍が常態化しつつあったが、後釜の外国人FWをすぐさま獲得して、日本人FWの育成を事実上なおざりにした感が否めず。戦術面でも、良くも悪くも「遠藤→外国人FW」のホットラインに少なからず依拠してきた)。

 (4)守備の拙さ(藤ヶ谷の不安定感、山口智の衰え[特にスピード面]の散見を、試合展開を読む「サッカーIQ」と「インテンシティー(集中力)」の高さで補完してきたが、守備面のポカが散見されてきたことも否めない。尤も、失点を気にせずあくなき「超攻撃性」こそ、G大阪の持ち味であり続けた訳だが)。

 

 [2]西野朗政権の終焉の過程、そして大功労者への処遇等の稚拙性。

 (5)西野朗監督を、事実上「追放」同然に退任させたこと。ACLトロフィー、CWCでのマンUとの激闘を具現した指揮官なのだから、退任の際は、それ相応の手順を踏むべきではなかったのか。

 (6)西野朗の後継指揮官に求められる資質は、「ガンバ主義」、つまり、「超攻撃性」というフィロソフィー(クラブ哲学)を継承し得る指揮官であってしかるべきであったはず。故に、OB(しかもバンディエラ)の松波正信か、仮に外部からでも、できれば超攻撃志向の強い日本人指揮官を招聘すべきではなかったのか。何故呂比須に固執したのか、未だに理解できない。

 (7)橋本英という「大功労者」(しかもバンディエラ候補)に(戦力外通告)という意味不明で比例極まりない仕打ち。「ガンバ主義」の構築及び具現化、ACLトロフィー、CWCでのマンUとの激闘は、橋本英なくしてはあり得なかった(さらに述べれば、05年のJ1優勝も然り)。プレータイム減少を説明した上で、引退までG大阪でプレーさせてあげることはできなかったのか。

 (8)二川、山口智に対する大幅減俸(山口智をこれで退団へと追い込んだ。二川については、残留したこと自体感謝の思いである)。減俸(及びプレータイム減少)自体はやむなしにせよ、どうも契約更改の席上での説明不足がいわれている。「黄金の6人」の一翼を担う存在なのだから、それ相応の誠意ある説明責任を果たすべきではなかったのか。

 

 [3]補強戦略の稚拙性。

 (9)下部組織上がりの有望な若手である平井、下平を、さほど慰留する訳でもなく放出(しかも下平に至っては完全移籍)。これだけでも、下部組織上がりの若手、中堅への軽視ぶりを物語っている(確かに倉田、寺田紳、丹羽の帰還は評価したいけど)。

 (10)守備力の強化は確かにG大阪の重要命題であることは認める。しかし、(確かに有能な選手とは思うが)今野獲得に固執し過ぎた。そして右SB(加地の代役あるいは後継者)という懸案事項は事実上放置。

 (11)李根稿退団は、日本人FWの育成の絶好の契機であったはずなのに、平井を放出、そしてパウリーニョ、李昇烈を相次いで獲得。結局、FWに3人もの外国人を要するといういびつな戦力構成になる。

 (12)良くも悪くも特徴のあるラフィーニャ、パウリーニョ、李昇烈という「3人の外国人FW」の共存型という命題が事実上示された訳だが、3人の共存にはそれ相応の工夫が必要であった、と考えざるを得ない。これはとりわけフロントのリサーチ不足ではないか。

 

 [4]セホーンの指揮官としての限界性。

 (13)G大阪の命題として、「西野スタイルの継続的深化」が強く求められたはず。つまり、確かに課題要素である「守備意識向上」に取り組むことを遂行しつつも、「強い攻撃志向」を堅持する、そして崩しの引き出しを増やす(パススピード向上)、そして何よりも、「抜本的世代交代」こそ全力で取り組むべきであったのに、結論的に述べれば、それを事実上怠った。

 (14)簡潔に述べれば、「劣化デルネーリ戦術」。ハイプレッシングに取り組む姿勢が曖昧で(特に外国人3トップの守備意識に疑問符)、攻撃的MFは事実上サイド張り付きで(特に二川、阿部浩の持ち味を消した)、SBは積極的に上がるのか曖昧で(特に藤春は昨季の浦和の宇賀神状態に陥る)、CBは裏を突かれがちな傾向に陥る。

 (15)交代策が機械的。つまり無機質的。例えば、2列目に献身性の強い選手を投入して守備を強化するとか、DFラインを1枚削って攻撃的な選手を入れるとか、外国人3トップの一角を下げてクローザー要員を入れるとかの「戦術的メッセージ性の強い交代策」がほとんど皆無に近い感じであった。

 (16)「ターンオーバー」をほとんど遂行できていない。象徴的なのが、DFラインの顔触れがワンパターン。「黄金の6人」(橋本英、山口智は退団したが)の衰えが隠しきれなくなっているのに、若い選手を先発に抜擢する姿勢を怠る等、中長期的ビジョンが見えなかった。

 

 

 上記のことに照らして考えると、自分は、下記のことを、正直強く抱く訳です。

 

 「指揮官、フロント、選手、いずれにも大きな問題がある。『西野スタイル』の『深化的継承』に励みつつも、『抜本的世代交代』をせずして、G大阪の『ACLトロフィー奪還』はあり得ない。」

 

 自分は、このことを、正直強く抱く訳です。

 

 

 で、このブログエントリーを執筆している間に、「セホーン解任、松波正信政権誕生』というニュースが飛び込んできました。

 松波正信政権誕生、素直に嬉しく思いますが、自分に言わせれば、「西野朗の後継者は松波正信に他ならないのだから、時間がかかろうとも、最初からそうすればよかったんだよ。」と自分は強く考える訳です。

 

 

 正直、思うこと、感じることはいくつかあるのですが、ここでは、まず、昨季終了時に立ち返って、考察を進めることにします。

 

 

 (図解3)2011年G大阪最終型布陣。

 システム(4-4-2)

 監督(西野朗)

 

             ラフィーニャ           李根稿

            (川西)             (平井)

 二川                                      武井

(佐々木)                                   (橋本英)

             遠藤               明神

            (横谷)             (内田達)

 藤春          山口智              中澤聡        加地

(下平)        (高木和)            (金正也)       (金承龍)

                     藤ヶ谷

                    (木村敦)

 

 

 昨季は、Jでは3位(勝点70、ACL出場権獲得)、ACLは16強(大阪ダービーで敗北)でした。で、西野朗政権は終焉となりました。

 「黄金の6人」、とりわけ、「黄金のMF」は、橋本英が故障で事実上ほぼ全休、そして武井の成長により、事実上解体。で、「黄金の6人」自体、全員が「オーバー30」に突入。

 否が応でも、選手構成的に、何らかの変化が求められるのではないか、と感じた訳です。

 

 で、自分としては、西野朗政権が終焉するにせよしないにせよ、昨年11月上旬くらいの時点で、来季は下記のような理想布陣を編成して欲しい、と自分は願っていました。

 (ちなみに自分は、西野朗政権は、せめて2013年シーズンまでは続いて欲しいと思っていましたが。)

 

 

 (図解4)愛球人が希求していた、2012年G大阪理想布陣(当初版。昨年11月上旬時点)。

 システム(4-4-2)。

 監督(西野朗)。

 

             ラフィーニャ           平井

            (川西、星原)          (大塚)

[曹永哲]                                   [倉田]

(二川、阿部浩)                                (寺田紳)

             遠藤               武井

            (橋本英)            (明神、丹羽)

 藤春         [金英権]             内田達       [渡邉大]

(下平)        (山口智)            (中澤聡、金正也)  (加地)

                     藤ヶ谷

                    (木村敦)

 

 

 (図解4B)当初版の布陣の意図。

 (1)「黄金の6人」は大功労者であるので、残留させるが、総じてプレータイム減少を受け入れて頂く。

 (2)「超攻撃的ポゼッションスタイル」の方向性は堅持しつつ、「抜本的世代交代」による「育てながら勝つ」を志向。

 (3)李根稿、金承龍は放出やむなし。特に李根稿は、昨季(2011年)の貢献度の高さは認めるが、FWの一角を日本人にする方向性の方が中長期的ビジョンに照らして望ましいかと。

 (4)補強ポイントは、攻撃手MF、CBに新外国人を、そして右SBは加地の後継者獲得の観点から日本人をそれぞれ獲得する。攻撃的MFは曹永哲(新潟)、CBは金英権(大宮)を第1候補に、右SBは、サイドのマルチロール性を買って渡邉大(大宮)の補強に動く。

 (5)高木和、佐々木、横谷を、金英権、渡邉大の獲得のためのトレード要員とする(差額が生じる場合は金銭)。また、下部組織上がりの生え抜き重視の方向性を鮮明にするべく、倉田、寺田紳、丹羽を帰還させる。

 (6)FWの一角は日本人にする。中長期的に「強く愛される」チームであるためには、それが望ましいと考えるから。ラフィーニャの相棒の座を、平井と大塚で競わせる方向性にする。

 

 

 結論的に述べれば、これは、叶わぬことになってしまいました。

 勿論、「諸悪の根源」は、西野朗政権の「終焉の過程」に会ったように思う訳ですが、それと同じくらい、いやそれ以上に、G大阪は、「絶対にやってはいけないこと」をしてしまった、それが自ら崩壊を招くことになったように、自分は感じる訳です。それは何か。

 

 

 「生え抜きのバンディエラ候補で大功労者である橋本英を戦力外通告という方法で放出したこと。」

 

 

 自分は、橋本英の放出については、「絶対に許し難いことである。」と強く感じてなりません。

 確かに昨季は、故障によりほぼ全休を余儀なくされました。

 G大阪のレギュラーとしては、限界に近いといわざるを得ないでしょう(勝負どころの試合では先発して欲しい感じではあるが、ACLレベルという意味でフルシーズンはきついかと。ただ、力量的にはまだ2年くらいはACLレベルでできるはず)。

 とはいえ、力量的にはまだまだできるはずですし、少なくとも、「精神的支柱」として唯一無二的な重要性があるのではないか、と。

 

 橋本英の持ち味として、「サッカーIQ」「サッカーに向き合う姿勢」があります。

 確かに、技術レベルだけならば、ACLレベルなのか疑問符という見解も、起こりえなくもないでしょう。ですが、それを補って余りある、「試合展開を読む力」に優れている。

 そして、練習熱心、向上心旺盛。「若手の手本」としては、これ以上ない存在でしょう。

 

 よく、G大阪は、「遠藤のチーム」といわれますし、勿論、遠藤は、個人として素晴らしい「生ける伝説」であると強く思いますが、遠藤が極上の輝きを放てるのは、橋本英が「攻守両面をオーガナイズする」能力に優れているからに他ならない、と強く考える訳です。

 簡潔に述べれば、「そこにいて欲しい」と気にいてくれる、それが橋本英なんですよね。

 スペースを生み出す。スペースに飛び込む。ワンツーの相棒になる。決定機創出のためのつぶれ役(バスケでいうスクリーナー)になれる。高い位置での守備(奪ってからの速攻を生み出せる)。勝負どころでの仕掛けや飛び出し。

 そして何よりも、試合展開や局面に応じて、攻撃的にも守備的にも振る舞える。これができる存在としては、日本サッカー界においても、有数の存在であると強く思うのです。勿論、「勝利のメンタリティー」「素敵な人間性」も、特筆すべきでしょう。

 

 繰り返しになりますが、確かに、技術レベルだけならば、橋本英よりも有能なMFは、日本人だけでも、少なからずいるのかもしれません。しかし、橋本英は、技術レベルを補って余りある「サッカーIQ」の持ち主であった。

 そう。05年のJ1優勝。08年のACLトロフィー。08年のCWCでのマンUとの激闘。

 そこにはいつも、橋本英の姿があった。橋本英の存在なくして、「ガンバスタイル」の具現化はあり得なかったように思うのです。

 (とりわけ、08年のCWCでのマンU戦は、「日本サッカー史上最高のベストゲーム」であったと、自分は強く考えております。)

 

 では、何が言いたいのか。何故、橋本英の放出が、「絶対にやってはいけないこと」であったのか。

 

 

 「橋本英の放出は、ガンバスタイルの『魂』そのものを自ら否定するに等しい暴挙であった。確かに衰えは否めないかもしれないが、プレータイムの減少で折り合いを付けることはできなかったのか。『若手の手本』としてこれ以上ない存在であるのに、『抜本的世代交代』のために必要な存在を手放すことは意味不明極まりない。」

 

 

 感情論という批判は免れ得ないかもしれません。

 ですが、自分は信じていた。橋本英が、G大阪で選手人生を全うすることを。

 そして、引退するときに、背番号「27」が「永久欠番」になることを。

 (たとえ永久欠番ではなくとも、「準永久欠番」、つまり、「プレー、人間性の両面でG大阪のバンディエラにふさわしい生え抜きの選手」のみがつける「特別な番号」としてである。)

 

 このように考えると、西野朗政権の終焉の仕方以外で、G大阪は、今冬の移籍市場だけでも、少なくとも、「3つの失敗」を犯したように思うのです。

 第一に、先述のように、「橋本英の放出」。

 第二に、「今野の獲得への固執(及び右SBの放置)」。

 第三に、「外国人FW補強のミスキャスト」。

 

 

 では、第二の失敗、「今野の獲得への固執」について言及しましょう。

 

 G大阪の長年の懸案事項として、「守備陣の強化」がありました。

 確かに、自分自身、「つまらなく勝つよりも美しく負ける方がよほど有意義である」という「サッカー観」の持ち主です。

 ですが、「全員攻撃全員守備」という概念があるように、攻撃のみならず、守備も勿論重要な要素としてある訳です。

 ましてや、G大阪は、「日本サッカー界を代表するビッグクラブ」であり続けることが使命といってよい。「ACLトロフィー」をコンスタントに獲得し得るクラブであることが求められている(少なくとも自分は、そう考えています)。

 そしてACLでいえば、近年、中東は勿論、中国勢も、有力外国人選手を次々と獲得しており、自ずと守備面でどうしても「個の力」の向上が求められてきます。

 

 ですから、「守備の軸」の確保は、もはや至上命題といってもよかった(山口智が衰えを隠しきれなくなっていたので。結局退団した訳ですが)。

 その意味で、確かに今野の獲得は、理に叶っているのかもしれません。少なくとも、日本人CBに拘るという意味に照らして考えれば。

 

 というのも、今冬の移籍市場で出回るといわれていたCBでは、他にも栗原(横浜FM)、岩下(清水)等の名前も挙がっていました。

 ですが、栗原は、確かに現所属のフロントと折り合いがよくないといわれていましたが、出るぞ出るぞはあくまでもパフォーマンスで、現実的に出ていくことはまず考えられない(現にやっぱり残留した。というか、退団自体想像できないけど)。

 岩下も然り。退団説が燻っていましたが、そもそも自分は、岩下の退団は、まず考えられない、と思っていましたから。トライアングル、ピッチを最大限に大きく使う、流動性の強いスタイルを志向する「ゴトビスタイル」から去ることの利点が想像しづらかったので(ましてやヨンアピンという「手本」の存在がなおさら大きいかと。勿論、小野等の存在も然り)。

 

 そう考えると、今野の獲得は、確かに納得できなくはない。特に「読みの鋭さ」「低い位置からの組み立て」は、日本人CBでは最高レベルでしょう。

 ですが、自分は、今野の獲得は、「?」という思いを、当初からずっと抱いていました。いやむしろ、「獲るべき選手が違うだろう。」とさえ思っていたのです。

 

 

 というのも、自分は、G大阪における「山口智の後継者」は、内田達に他ならない、と強く抱いていました。もともと、ユース時代から、「読みの鋭さ」「ラインコントロール」「低い位置からの組み立て」には定評がありました。なかなかハートの強い選手だなあ、と(実際、昨季のACLとかでも年上の選手に臆することなく声出しを積極的にしていた)。

 そして、空中戦への対応がいま一つであることも、今野と相通ずる。その意味で、CB補強に重要なのは、「内田達と組ませ得るCB」ということになるのではないか。

 

 となると、望ましいのは、「高さ」「スピード」「読み」「組み立て」をできるだけ兼備し得る「万能型CB」となる。「高さ」があることがベストですが、ACLを考慮すれば、「スピード」「読み」がなおさら求められてくるのではないかな、と。そして支配力向上を考慮して「組み立て」があればなおよしかな、と。

 ですので、自分が、(図解4)にて、金英権(大宮)を推したのは、 上記の要素を兼備するCBであり、しかも将来性豊か(今季で22歳。ロンドン世代。しかも韓国代表でもレギュラークラス)。これ以上ないうってつけの存在だろう、と(だから、自分が今季大宮を高く評価するのは、金英権やラファエルの残留に成功し、しかも曹永哲、カルリーニョスという有力外国人の獲得に成功したからに他ならない。志向するサッカーの方向性に共感できるからでもある)。

 

 仮に、金英権の獲得に失敗したとしても、スピラノビッチ(浦和)も有力な選択肢かな、と。

 高さ、強さは勿論ACLレベルですし、豪州代表でも定位置を張る。組み立てはぼちぼちレベルですが、それでも内田達との相互補完性は理に叶っています。

 で、昨季終盤戦、浦和で出場機会を減らしており、その意味でも、獲得に動く価値はあったのではないか、と(結局残留。ただ、ミシャ政権では微妙な立場になっていますが)。

 

 

 では、今野獲得に、自分が何故、疑問符的なスタンスをずっと抱き続けてきたのか。

 理由は、橋本英が退団時にこぼした言葉から垣間見ることができるように思うのです。

 

 「僕は幸い、ずっと西野さんに起用してもらっていたけど、評価面でも、起用法でも、特に下部組織上がりの有望な選手がないがしろにされている感じであることに、ずっと違和感を抱いてきた。」

 

 そう。今野獲得の場合、下部組織上がりの生え抜きの有望な若手である内田達と、もろにタイプが重なってしまう。少なくとも、内田達は、CBとしての居場所は否定されたも同然になる。

 (ただし、やり方次第で、今野と内田達を同時起用すること自体はできなくはない。これについては後述しますが。)

 

 とすれば、内田達の立場から考えれば、「俺は信用されていないのか。」となってしまう。

 これは、「ある事例」とデジャブに映ってならないんですよ。

 

 

 そう。08年の浦和。07年、浦和はACLトロフィーを叶えましたが、その最大の功労者の一人が、生え抜きのFW、永井雄でした。

 07年の浦和は、ワシントン、永井雄の2トップであった。で、08年新春の移籍市場で、ワシントン放出、エジミウソン獲得は決まっていた。しかしその上…。

 

 そう、高原の獲得です。これで、08年の浦和は、2トップが、「エジミウソン、高原」という方向性に、否が応でもなった。

 で、永井雄が抱いた思い。「俺は信用されていないのか」。

 08年の浦和は、最終的に残酷な崩壊劇を迎えることになります。それも、G大阪がACL準決勝第2戦、遠藤、橋本英、ルーカスの3人でバイタル、PAを流麗なパスワークで蹂躙して遠藤が一閃することによって。

 この崩壊劇は、自分は、高原の獲得で、永井雄をはじめとする生え抜きの選手のプライドを少なからず傷付けることになった(高原獲得自体があまりにも電撃的であったので)、それに端を発しているように考える訳です。

 

 

 この浦和の高原獲得と、今回のG大阪の今野獲得。

 自分には、どうしてもデジャブに映るんですよ。

 生え抜きの選手が、「俺は信用されていないのか。」と思ってしまうのではないか、ということが重なる意味において。

 

 というのも、補強は勿論重要なのですが、それは、「育成」が基礎にあってこその「ピンポイント」であって然るべき筈なのです。つまり、「育成あってこその補強」ではないのか、と。

 ましてや、G大阪の下部組織は、Jでも最高レベルの質を誇ります。で、内田達は、下部組織上がりの生え抜きの有望な若手。昨季のACLとかでも、非凡な将来性をみせていた。

 ならば、中長期的ビジョンに照らして、内田達の可能性にかけてみよう、となってもよいのではないか、と自分は思うのです。まして、ファン感情にすれば、生え抜き選手の成長や活躍は、とても喜ばしいように映るものではないか、と思いますから。

 

 ですから、CB補強を否定しているのではない。むしろCB補強は必要であったとは思う。

 ですが、「補強すべきタイプのCBを補強しなかった」。それが、問題の本質であるように思う訳です。

 

 

 右SB補強についても然りです。加地の代役あるいは後継者の問題は、数年来の懸案事項でした。

 (図解4)では、渡邉大を推しました。「サイドのマルチロール」であり(左右を問わずサイドならばどのポジションでも質の高いプレーができる)、運動量とスピードに優れ、年齢的にも加地の後継者としてうってつけである(今季で28歳。加地よりも4歳年下になる)。

 出血を覚悟してでも(つまり、複数人の選手を差し出してでも)、獲得に動いて欲しかった、と思う訳です。

 この右SB問題に手を付けられなかったことも、大きな痛手といえるでしょう。

 

 

 そして、第三の失敗。「外国人FWのミスキャスト」。これはどういうことか。

 これについては、結論的なことから述べたいと思います。

 

 「外国人FWのミスキャストとは、まず、外国人FWを3人獲得する(ラフィーニャは11年夏から)こと自体がまず問題外。中長期的ビジョンに照らせば、2トップであれ3トップであれ、FWの一角は生え抜きの日本人選手に充てるべきではなかったか。

 それに、ラフィーニャを軸にすると考えた上での外国人補強、と考えると、パウリーニョの補強自体、ピント外れである。この時点で、選手編成に相応の工夫が求められることになってしまった。李昇烈を第3の外国人FWとして獲得したことで、なおさら編成をややこしくしてしまった感が否めない。

 もしも、李昇烈のみを獲得するならば、ラフィーニャとの相互補完性はそれなりにとれているので、それはそれでよかったかもしれない。しかし、パウリーニョの補強はミスキャストであった。

 というか、外国人補強という意味では、むしろFWの補強はあえてせず(生え抜きの日本人FWの育成に重点を置く意味で)、攻撃的MF(曹永哲)、あるいは、トレクアルティスタ(カルリーニョス、ジェパロフ[ウズベキスタン代表、アル・ジャバブ〈サウジ〉]、ルイス・エンリケ[全北現代])の補強の方がよかったのではないか。

 いずれにせよ、外国人FWに3人を擁する編成をすること自体、生え抜きの日本人FWのプライドをひどく傷付けかねないし、ACLを考慮すれば、どうしても外国人FWの3人の共存型のベストの布陣を模索せざるをえなくなる。

 故に、勿論セホーン政権自体の指導力の稚拙性は看過できないことであるのだが、たとえ誰が指揮官であろうとも、そもそも選手編成自体に少なからず問題があったことが否めないのではないか。」

 

 このような思いを、自分は強く抱く訳です。

 

 

 自分は、(図解4)にて、曹永哲(大宮)の補強を強く推しました。

 曹永哲は、左からPAへカットインする動きを最も得意としますが、2トップの一角や、OH(トップ下)、あるいは右でも質の高いプレーができます。それでいて、守備意識も高いので、G大阪の攻守の質を高めるうえでうってつけではないか、というのが理由です(今季で23歳という将来性の豊かさも勿論大きな理由としてあります)。

 

 それはともかく、時系列的に考えれば、今回の場合、「ラフィーニャ(現有戦力)→パウリーニョ→李昇烈」の順に獲得しました。これ自体、ややこしい補強になったなあ、という感じです。

 では、3人の外国人FW、それぞれの特性を、概要的に述べてみましょう。

 

 

 (図解5)2012年G大阪、3人の外国人FWのそれぞれの特性。

 

 「ラフィーニャ(左利き。裏への飛び出し、スピードに優れるが、前線からの守備意識も旺盛。上背がないが、足下でのポストプレーも向上中。献身性と思い切りを兼備する感じ。)

 パウリーニョ(左利き。いわゆるスピード型FW。左に流れてプレーしたがる傾向が強い。キック力に優れ、FKもできる。上背がなく、ポスト、空中戦はまず望めない。守備意識はぼちぼちレベル。)

 李昇烈(SS[セカンドストライカー]がナチュラルポジションだが、攻撃的ポジションならばどこでも対応可能。ただ、流動的にプレーしたがる傾向があり、ある程度の自由を付与する必要あり。創造性、仕掛けに優れ、守備意識もそれなりに高い。ただしサイド張り付きは持ち味を減退する感じか。ポストも不得手な感じ。)」

 

 

 このようなことから、ナチュラルポジションとしては、ラフィーニャ(2トップの一角)、パウリーニョ(3トップの左WG)、李昇烈(2トップの一角)、という感じでしょう。ただ、パウリーニョが左に流れたがり、李昇烈もポジションレスに動きたがる傾向を考慮すれば、特に右よりはラフィーニャへの負担が増大してしまう。この時点でアンバランスです。

 

 では、まず、パウリーニョ獲得時は、どういう工夫が必要であったのかを、考察したいと思います。

 ラフィーニャは、草津時代から2トップの一角でのプレーを得意としてきましたが、1トップでも対応可能なところを見せてもいます。ですので、ラフィーニャをCF、パウリーニョを左WG(「4-2-1-3」の左)で起用する。

 で、第3の外国人として、トレクアルティスタ(カルリーニョス)の補強に動く。これで支配力を一気に高め、相手守備陣に圧力を掛ける感じです。

 で、右WGは、いわゆる「サイドアタッカー」タイプを起用する。ただし、攻守両面での質の高さ(仕掛けと守備意識の兼備)を求める感じです。この場合、倉田(寺田紳)を起用する感じです。あるいは、「スピードスター」を求めるならば、星原も一案でしょう。

 しかし、トレクアルティスタ(OH)の補強に動いた訳ではない(李昇烈はトレクアルティスタにも対応可能だが、本質的にはSSの選手である)。二川や阿部浩を充てて補強しないのも一案だったでしょうが、パウリーニョは守備意識があまり高くないので(気さくな人間性は魅力ではあるのだが)、トレクアルティスタには、ゲームメイクと守備意識の兼備がどうしても求められる。

 だから、ラフィーニャとパウリーニョの共存ありきならば、カルリーニョスのようなタイプの選手こそ、併せて獲得すべきであったように思うのです。

 

 これが、ラフィーニャと李昇烈の2人だけならば、まだ何とか共存はうまくできたかもしれません。というのも、李昇烈は流動性に優れるFWですが、裏を返せば、衛星的に動くことに優れているともいえる。

 で、ラフィーニャは、献身性に優れるFWですから、李昇烈の持ち味を理解して、足下でのポスト、裏への飛び出し、前線からの守備を主体とすることに徹せば、相互補完性に優れるように考える訳です。

 

 

 ですから、「外国人FWのミスキャスト」というのは、はっきり述べれば、「パウリーニョの補強」である訳です。申し訳ないけど、ある種の異分子と化してしまっている。

 そして、外国人FWを3人も擁する選手編成により、生え抜きの日本人FWの居場所を(少なくとも、先発としては)、事実上奪ったも同然にしてしまった。これでは、生え抜きの日本人FWの立場に照らせば、「俺は信用されていないのか。」となってしまいかねないでしょう。

 繰り返しになりますが、「育成あってこその補強」なのです。

 「補強」が、あまりにも「自己目的化」し過ぎてしまい、「育成」がなおざりになっていやしなかったか、と。自分は、このことを、強く抱いてしまうのです。

 

 ですので、勿論、セホーンの指揮官としての限界は否めないのですが、そもそも「選手編成自体に大きな問題を抱えていた」、これが「崩壊の本質」であるように、自分は強く考える訳です。

 

 (その3)(その4)では、G大阪の再建の自分なりの処方箋の考察を主体に記します。

 

 

 という訳で、長い文章になりますので、続きを(その3)にて記します。

 何卒、最後まで御拝読して頂けると、とても有難く思います。

 

 よろしく御願い申し上げます。