「2012年夏、Jリーグ勢がACLトロフィーを実現するために必要なことの一考察(その3)。」

 こんにちは。愛球人と申します。

 

 「愛球人ホームページ。」、第22回のブログエントリーの論題は、「2012年夏、Jリーグ勢がACLトロフィーを実現するために必要なことの一考察。」です。

 

 実質的には、ブログエントリーの本論の21回目になります。そして、サッカーブログエントリーの5回目になります。

 

 今回は、掲示版とのコラボエントリーの4回目、という位置付けです。今回は、「議論するエントリー」と「感じることを伝えながら読者と意見交換をもしたいエントリー」の中間型という位置付けになるかなと思います。

 今回は、とても長い文章になるので、(その1)(その2)(その3)に分割して執筆させて頂きます。

 

 ブログ本体については、コメント欄は設けません。その一方で、読者との議論、意見交換的な意味付けとして、掲示板にてコメント欄を設けさせて頂く感じです。

 私のHPにおけるブログは、過激な内容がどうしても多くなることかと思いますが、今回は、とりわけ過激になってしまうかな、と正直感じております。読者の中には、私の考えに共感できない、と考える人間も少なからずいるかなと思いますが、こういう考えもあるんだ、と解釈して御拝読して頂けると、とても有難く思います。

 

 今回は、「2012年夏、Jリーグ勢がACLトロフィーを実現するために必要なことの一考察。」とあります。

 人間の数だけ個性があるように、サッカーファンの数だけ価値観があるかなと思いますし、今回、ここに示すのは、あくまでも自分(愛球人)の価値観に過ぎません。

 「プロフィール」欄に、自分なりの「サッカー観」を示しておりますので、それを閲読した上で、今回のエントリーの文章を御拝読して頂けると、とても有難く思います。

 

 では、(その2)の続きから、考察を始めます。

 

 

 Jリーグ勢がACLトロフィーを叶えるために大切なこととは何か。

 いくつかあるだろうとは思うのですが、ここで、Jリーグを取り巻く状況を整理することから、踏まえることが必要でしょう。

 

 

 (図解6)現状整理として、Jリーグを取り巻く状況が現時点でどうか。

 

 (1)日本人選手の相次ぐ国外移籍。

 (2)代表とJリーグの人気に広がる格差(代表はコンスタントに満員近くいくが、Jリーグは観客動員が頭打ち。ドル箱である浦和戦でさえ、集客に陰りが否めない。

 (3)Jリーグの個々のチームの、「自分たちのサッカースタイル」、あるいは、「フィロソフィー(不変の理念)」の構築及び具現化がなかなかできずにいること。

 (4)過密日程で代表活動にも支障が散見されること。ロンドン五輪代表は、予選からことあるごとにJリーグ側との水面下での折衝に労力を大きく割かれたともいわれる。

 (5)資金力の不足感。国外からの有力外国人がなかなかこれなくなり(今オフもカルリーニョス[大宮]、ケンぺス[C大阪]等、数えるほど)、そして有力外国人がことごとく中東に持っていかれつつあること。

 (6)地上波やBSでの放送試合数が極端に少ない。ダービーマッチや、有力チーム同士の対戦が、BSでさえ拝めない事態が少なからず散見。

 

 

 申し訳ないけど、現在のJリーグには、ネガティブな状況が少なからず散見されることが否めない。

 本来は、「Jリーグあっての日本代表、日本サッカー界」であるはずなのです。

 しかし、現実は、「日本代表あってのJリーグ」という、いびつな事象がまかり通っている感じが否めない。このままでよいのだろうか、と。

 

 

 とりわけ、気に掛かることとして、「個々のチームの不変のフィロソフィーの構築及び具現化」が、想像以上に苦慮している現実があります。

 

 第一に、鹿島。フィロソフィーの具現化にいち早く取り組み、確立してきたチームであるはずなのですが、ある種の金科玉条としてきた「ソリッドな4-4-2」が、Jの内部でさえ封じられつつある傾向が散見される。

 一つの背景として、大黒柱の小笠原の衰えが挙げられますが、問題の本質はそれだけではないだろう、と思うのです。「小笠原→柴崎」の「王位継承」が叶うところで、それで問題解決となる訳ではないだろう、と。

 そう。より根深い問題の本質は、対戦相手に「中央を閉じる」ことをされたときに、サイドをいかにして使うかや、中央をいかにしてこじ開けるかを、その引き出しを充分に構築できなくなっているのではないか、と思う訳です。

 

 「不変の理念」の必要性。これは、一人のサッカーファンとして、常々声高に自分が主張し続けていることですが、それは、「ACLトロフィー」を叶え得るためであることが前提ではないか、と。

 そのように考えると、鹿島の場合、「中央ありき」ではなくて、「中央でもサイドでも高次元での崩しを具現化し得る攻撃システムの再構築」が必要であるように思うのです。

 近年、ACLで同じような失敗を繰り返していることに照らしても、「4-4-2」絶対主義を見直して、「3トップシステム」との併用をも意識しながら、フィロソフィーの再構築を志向した方がよいように、自分は考える訳です。

 

 

 第二に、G大阪。G大阪の場合、10年間に及ぶ西野朗政権により、「ガンバスタイル」を確立してきたように思うのです。しかし、西野朗政権の終焉と、「黄金のMFカルテット」(遠藤、橋本英、二川、明神)の解体が、同時のタイミングで起こってしまったことで、「自らボールを積極的に支配するアクションサッカー」というフィロソフィーを、一瞬で崩壊させてしまったのではないか、と。

 

 現在のG大阪の崩壊劇は、複合的な要員があろうかとは思いますが(外国人FWの個人能力の低下、今野が未だにフィットしきれないこと、GKの質の問題、左SB藤春の裏のスペースの狙いうちの傾向、等々)、結局のところは、「カルテットの衰え(橋本英は退団したが)」、及び、「若手育成を充分にできなかったことのつけ」、それに帰結するのかな、と思うのです。

 ただ、これについても、鹿島と同様、現有戦力に、ドリブラータイプがあまりプライオリティーが置かれていないのではないか、その影響があるのではないか、と自分には映るのです。

 いずれそう遠くないうちに、遠藤にも引退のときはくるでしょう。そして、外国人FWの個人能力に依存しない攻撃システムの構築が、結局できなかった(つまり、日本人FWの育成に失敗したことと事実上同義である)。つまるところ、これに帰結するのかな、と感じる訳です。

 

 

 第三に、名古屋。志向しているサッカースタイルは、「中央からもサイドからも多様な崩しの引き出しを持てるサッカースタイル」ということで、それ自体は共感できるのです。

 ですが、現実にそれができているかといえば、正直限定的。これもここ数シーズン、ずっと繰り返しています。

 確かに、名古屋の場合、「ケネディ」「闘莉王」という、良くも悪くも、攻守それぞれに絶対的な「軸」が存在しているため、その「軸」が不調だと、一気にチームパフォーマンスが低下しやすい構造的欠陥は、否めないでしょう。現に今季前半戦は、ケネディが絶不調で、それがチーム成績にも直結しましたから。

 

 しかし、名古屋の場合、近年指摘されつつある傾向として、「レギュラーの11人だけを取れば、J最強であるが、ひとたび故障者が出ると、なし崩し的に続出して、一気にチームパフォーマンスが低下してしまう」ことが挙げられます。

 例えば、昨季も、主力がそろった後半戦は、一気に追い上げましたが、故障者続出にあえいだ前半戦のビハインドを跳ね返せず、勝点差「1」の2位に終わりました。

 

 何が問題なのかといえば、これも(ある意味、G大阪や鹿島以上に深刻と思うが)、「若手育成を充分にできていないことのつけ」に帰結する訳です。しかも、名古屋の若手は、総じて素質の高い選手を多く擁している、といわれています。

 若手の出場機会が多くないのは、その若手の平素の練習姿勢が不充分だとかの理由とかも、もしかしたらあり得るのかもしれませんが、現実論として、試合経験を積まなければ、素質を伸ばせないように思う訳です。格下相手の試合とかを巧みに使って、何故もっと積極的に「ターンオーバー」をしないのか、名古屋の試合をみると、いつも歯がゆく感じるのは、自分だけでしょうか?

 

 

 ここまで、鹿島、G大阪、名古屋を例にとって、考察をさせて頂きましたが(あくまでも、自分の私見に過ぎませんが、こういう考え方もあるんだ、と解釈して頂けると有難いです)、何が言いたいのかといえば、「フィロソフィー」の構築及び具現化がいかに大切か、そして、その実現がいかに長い時間と労力を要するか、ということです。

 

 勿論、「フィロソフィー」の構築及び具現化が絶対不可欠、と強く考える訳ですが、Jリーグ勢が、ACLトロフィーを叶えるために、戦術面で大切なことは、それだけではないとも思うのです。

 

 そう。「フィロソフィー」の構築及び具現化は、戦術面の第一の要素としてある。

 第二の要素は、「ACLに向けたピーキング」です。

 

 それは、まず、選手起用の面で、ACLでベストメンバーが最高のコンディションで試合に臨めるように逆算して選手起用の工夫をする。というのも、今やACLは、GLでも、格下と呼べる相手は、もはやほとんど皆無になりつつあるからです(現に今季も、柏はブリーラム[タイ]に圧倒的な力の差を誇示できたわけではなかった。むしろ東南アジア勢が地道に力を付けてきているともいえる)。

 ましてやACLは、たとえGLでも、「一線必勝」のトーナメントの心意気が求められます。その国のリーグを自分たちが代表している、その「誇り」「プライド」を掛けた勝負であるからです。

 

 それはつまり、選手起用の工夫は言わずもがなです。そのためには、地道な若手育成の重要性は勿論のことですし(特に名古屋はこれが大きな課題かと)、若手が起用されてもチームの機能性の質をできるだけ堅持し得るためには、それこそ、「フィロソフィー」の深化の度合いこそが、求められてくる訳です。

 しかし、工夫すべき要素は、選手起用だけではないとも思うのです。いかにして自分たちの持ち味を発揮し得るかは勿論、いかにして相手の持ち味を消すかの工夫も、同時並行的に求められてきます。

 

 ここで、今季の広州恒大の基本布陣を参考にしながら、どのような方策が考え得るのかを、自分なりに考察したいと思います。

 

 

 (図解7)2012年夏、広州恒大の予想される基本布陣。

 システム(4-2-3-1)

 監督(マルチェロ・リッピ)

 

 

                     バリオス

 

 左WG                 コンカ                  ムリキ

 

           CH                   CH

 

 左SB       金英権                  CB        右SB

 

                     GK

 

 

 (注意すべき要素)

 (1)バリオスのオフザボールの動き、及び裏への飛び出し。

 (2)コンカの創造性、ボールコントロール。

 (3)ムリキの爆発的なスピード(ドリブルからシュートまで一気に持って行ける)。

 

 

 恐らく、今後、広州恒大をはじめとする中国勢を撃破しない限り、ACLトロフィーはより一層厳しくなってくる。そう考えると、例えば、広州恒大を、いかにして攻略するかです。

 この場合、打てる手の代表格として、例えば、下記の方法があるでしょう。

 

 「コンカとムリキにそれぞれダブルチーム(1対2)を仕掛ける。」

 

 これは確かに一つの方法ではあると思います。しかし、それだと、4人がダブルチームの守備要員に充てられる。これは攻撃面を考慮すれば、非効率的といわざるを得ません。

 現実的な方策の一つとしては、コンカとムリキに、それぞれマンマークを付けて、そしてさらにもう1人、どちらかへのダブルチーム要因になり得る選手を充てる、これならば3人なので、可能かもしれませんが。

 

 あるいは、下記の方策も、考えられるでしょう。

 

 「トリボーテ(3CH)を採用して、守備陣形をよりコンパクトにする。球際に強く、かつ攻守の切り替えに優れる選手をトリボーテに配する。」

 「SHあるいはWGに、守備意識の高い選手を、そしてSBには突破力を兼備し得る選手をそれぞれ配して、サイドで相手WGへの『はさみうち』を可能にし得る人形を採用しつつ、できるだけSBを高い位置に張らせて、相手WGを守備に忙殺させて孤立へと追い込む戦術をも駆使する。」

 

 この場合ならば、特に、広州の右WGのムリキのスピードが脅威です。勿論、OHの今夏の創造性も、留意せねばなりません。

 そこで考え得ることとしては、広州の右が脅威ということは、留意すべきサイドは、自チームの左ということになる。

 ということは、例えば、左SBを高い位置に張らせて、ムリキを守備に忙殺させることに追い込む、その一方で、コンカ対策に、アンカーを配して、ボール奪取と運動量に優れる選手をアンカーに置く。自分ならばこうします。

 

 では、自分が例えば名古屋の指揮官として、広州恒大を相手に試合をする場合、どのような布陣や戦術を志向するのか、自分なりの私案を、下記に示してみたいと思います。

 

 

 (図解8)自分が名古屋の指揮官ならばとしての、広州恒大戦での理想布陣。

 システム(4-3-3)

 監督(愛球人)

 

 

                     ケネディ

 

 永井謙                                      金崎

 

             小川               藤本淳

 

                     ダニルソン

 

 阿部翔         闘莉王              ダニエル        田中隼

 

                     楢崎

 

 

 (志向する戦術。)

 (1)両SBをあえて高い位置に張らせる。それにより、相手の両WGを孤立へと追い込み、守備に忙殺させる。

 (2)トリボーテの一角の小川は、必要に応じて下がり目をも担う。コンカ、ムリキへの守備時のダブルチームの一角の動きをも意識させる。

 (3)ダニルソンは、この場合はコンカ対策を主たるタスクとする。勿論、局面に応じて組み立て役の一翼をも担う。

 (4)広州の素早い切り替え。ひとたび攻撃の局面になれば、雪崩式にできるだけ多くの人数を敵陣サードへと突進させる。両WG、両OHは、状況に応じて積極的なポジションチェンジを遂行。

 

 

 これはあくまでも、自分の私案にすぎませんが、いずれにせよ、Jリーグ勢がACLトロフィーを叶えるためには、「フィロソフィー」の構築及び具現化、及び、対戦相手の特徴を見極めて、相手の持ち味を消すことと、自分たちの持ち味を活かすことの両立を可能にする戦術の構築、それが求められるように思うのです。

 結局のところ、戦術の「引き出し」を増やすこと、それはつまり、「チーム力」の向上なくして、ACLトロフィーは厳しい、ということであるように思うのです。

 

 

 という訳で、長い文章になりますので、続きを(その4)にて記します。

 何卒、最後まで御拝読して頂けると、とても有難く思います。

 

 よろしく御願い申し上げます。