「サッカー日本代表、2014年ブラジルW杯検証的総括、及び、今後に向けての具体的提言(その3。2014年W杯における具体的敗因)。」

 こんにちは。愛球人と申します。

 

 「愛球人ホームページ。」、第45回のブログエントリーの論題は、「サッカー日本代表、2014年ブラジルW杯検証的総括、及び、今後に向けての具体的提言。」です。

 

 実質的には、ブログエントリーの本論の44回目になります。そして、サッカーブログエントリーの7回目になります。

 

 では、(その2)の続きから、考察を始めます。

 

 

 いよいよ、「敗因の具体的分析」へと、論を進めていきたいと思いますが、まず、本大会へと進む前の、概要的時系列的考察を、したいと思います。

 

 時計の針を、まずは、「23人枠」発表のとき。つまり、5月12日。

 このとき示されたのは、ざっくり述べれば、下記のことです。

 

 「『4-2-3-1』、より一層深く述べれば、『戦術≒本田』と心中する。」

 

 これはどういうことか。下記に示そうと思います。

 

 

 (図解2)「23人枠」にて、戦術面において、何を除外したのか。

 

 (1)ハーフナー(あるいは豊田)を外すことで、「パワープレー(あるいは2トップ)」を除外。

 (2)元気(原口のこと)を外すことで(斎藤学が入ったが、今季のACLではほとんど通用していなかった)、「流れを変える突破」という選択を除外(そして、「3トップ」を除外したともいえる)。

 (3)細貝を外すことで、「トリボーテ」(3センターハーフ。日本的表現だと、「3ボランチ」)を除外(つまり、「4-3-3」という選択肢を除外)。

 (4)CBは、「いつもの4人」(5人目を入れず)。つまり、「3バック」を除外。

 (5)22、23人目に、青山、大久保を入れたが、「精神的支柱」要員(闘莉王、寿人、槙野等)を組み込まず。つまり、「ベンチからチームを鼓舞できる存在」を排除(一体感を生み出せるかの不安を誘発)。

 

 

 「23人枠」選出においては、あらゆるファクターが複雑に作用します。

 対戦相手、これまでの準備、選手の状態(J、ACLでのパフォーマンスを含む)、等々。

 

 ここで強調したいことは、「最強の23人」とは、必ずしも「最高の23人」とは限らない、ということです。

 というのも、「チーム」とは、「生き物」なんですよね。しかも、W杯は、確かに「短期決戦」であるのですが、それと共に、どの国にも、直前におよそ「1か月」の準備期間が設けられている訳で、「それ相応のまとまった長い時間」を必要ともするんですよね。

 

 しかも、代表選手ともなれば、どうしても、プライドの塊になりがちです。それを、どのようにして、「心を一つにする」か。

 勿論、スタイル、戦術も重要ではあるのですが、それと同じくらい、いやそれ以上に、「一体感」が、とても大切であると思うんですよね。結局それができずに負けた、それが自分の解釈としてあるのですが…。

 

 

 時計の針を、さらに戻してみましょう。

 

 2012年6月。W杯アジア最終予選第2戦、ヨルダン戦。

 スコアは6対0、完勝。これだけみれば、喜ばしいですし、確かに内容でも、まさしく圧倒でした。ですが、このとき、自分は、逆に不安感を増大させることとなったんですよね。

 

 というのも、W杯3次予選。ラスト2試合、北朝鮮、ウズベクに、共に0対1で敗北。このとき、本田は不在でした。

 それが、本田が復帰するや否や、W杯最終予選第1戦、オマーン戦も、3対0で勝利でしたし、そして、ヨルダン戦、完勝。

 

 一見すると、これはいい感じだ、このパフォの質を持続すれば、W杯でもGL突破が見えてくる。

 確かにそうかもしれません。でも、自分は、このヨルダン戦のとき、正直、

 

 「やばいんじゃないの?」

 

 という思いが、一気に「確信」になってしまっていました。

 

 理由はいくつかあるのです。確かに、W杯最終予選は、どうしてもハードな勝負になるので(勝ち点を1つでも多く拾うこと、それ自体に意味がある)、ある程度のメンバー固定は、やむなしかもしれません。

 ですが、ハードな勝負になるからこそ、むしろなおさら(特に攻撃陣)、その時々で調子のよい選手、結果を出した選手(JやACLにて)を積極的に組み込んで然るべきと思いますし、そもそも、W杯3次予選の時点から、メンバー固定化の傾向が、顕著でした。

 

 いくつか疑問符を挙げれば、下記のような感じです。

 

 

 (図解3)W杯アジア最終予選の時点で、「おかしいんじゃないの?」と思っていたこと。

 

 (1)「戦術≒本田」の加速度的依存傾向。本田がいると居ないとでは、全く別のチームになってしまう(しかもパフォの質が極端に劣化)。

 (2)守備において、GK川島のスーパーセーブが毎試合のように出る(しかも複数回)。裏を返せば、CBの守備がそれだけ危なっかしい(質がよろしくない)ことの証左でもある。つまり、「吉田&今野(あるいは伊野波)」という人選自体に欠陥があることが日を見るよりも明らかだったのに、人選の入れ替え、あるいは3バック(または3CH)導入に消極的であり続けたこと。

 (3)CFがなぜかほとんど専ら潰れ役。まず基本は、「以下にFWに得点を取らせるか」から攻撃戦術を組み立てる(少なくとも、レパートリーの一つとして)ことがあって然るべきなのに、その発想がまるで感じられなかったこと。あと、CFにサイズを求めるって、バスケやバレーボールじゃあるまいし、みたいな。

 (4)攻撃のスピードがほとんどいつも同じテンポ。緩急(強弱)を付けることで、相手守備陣を崩す発想があまりないというか、ドリブラ―軽視の感が否めなかった(試合中の采配、選手交代で変化がつけられているという感覚も持てなかった)。

 (5)「3-4-3」導入に指揮官は躍起になっていたが、なぜか選手は一向になじめず。3バックシステムは、日本は、例えば「第1次岡田」「トルシエ」「ジーコ」「オシム」(ジーコ、オシム時代は、オプションの1つだったが、使用頻度が少なくなかった)と、代表でも長く用いられ、クラブでも、少なからず用いられてきたはずなのに、一向になじめないのは、恐らく「ザッケローニ版3バック」のメカニズムが、想像以上に複雑だったからでは、と。

 

 

 特に(5)。「3バック」といっても、例えば、「3-3-1-3」(いわゆる「ビエルサシステム」。ピッチ上に三角形[トライアングル]を多く生み出せる布陣で、個人的には大のお気に入りシステム)ならば、日本ではあまり用いられてこなかったので、困惑もわからないではない。

 ですが、ザッケローニの「3-4-3」は、長く日本で用いられてきた「3-4-1-2」と、(机上での)メカニズムは類似しますし、それなのに、何故一向に機能の気配がないのか、と。

 

 あるいは、(2)。あまりGKが目立つのは、本来はよくないことであり、CBの質がそれだけよろしくないを認めているようなものでは、と。ラインコントロールやポジショニング、役割分担(どちらがインターセプト、どちらがカバーリングを主体とするか)の「意思統一」が見出せなかった感じなんですよね。

 そもそも、2CBのいずれも、自分からみたら、「スピード勝負」にまるで脆く、そう考えると、それが「GK(川島)依存」の「諸悪の根源」の大きな一つといってよい感じに、自分には映ったのですが。

 

 

 「おかしいんじゃないの?」は、時間を追うごとに、加速度的に強くなっていきました。

 

 

 (図解4)ザッケローニ政権における、チーム作りでの「おかしいんじゃないの?」(その2)。

 

 (1)U23(ロンドン五輪)にて、4強入りを叶えた原動力の、永井(名古屋)を、「U23とA代表では志向するサッカースタイルが異なるから」という理由で、呼びすらしなかったこと(まず読んで、例えばせめて2~3試合は使ってみて、それでだめだったらだめで仕方ないかもですが、呼びすらしないとは…)。

 (2)東欧遠征(ベラルーシ戦。13年10月)にて、ハーフナーを起用したが、このとき、ラスト10分足らず、1点ビハインドという局面での投入に照らせば、明らかに「パワープレー要員」の意図があるのに、ハイクロスやグラウンダーがまるでなし(というか、ハーフナーにボールすらほとんど来ない)。チームとしての体をなしていない、と思った。

 (3)2部降格を喫し、2分でも「違い」を生み出せなくなっている、遠藤、今野を、それでも召集、起用し続けたこと(衰えが明らかなのに、しかもレギュラークラスで)。

 (4)直近のシーズンで、海外組において、(所属チームにて)パフォ尾の質を落としていた選手が複数人いたのに(名指しすれば、吉田、清武、乾)、指揮官が極秘で渡欧するでもなく、いわんや、J復帰を働き掛けた形跡すらなさそうなこと。

 (5)年明けの国内組限定による長期集中合宿(2~3週間程度)を、実施しなかったこと(13年、14年。ジーコ政権以来、日本代表の強化の長年の生命線の1つであった)。戦力の底上げの機会を失ったも同然ではないか(そして、結局、「戦術≒本田」ありきを実証したようなもの。しかも、「戦術≒本田」といっても、本田の、どのような長所を活かしたいのかが、結局最後まで見えなかった)。

 

 

 語り出すと、それこそきりがないですが、結局のところ、「チーム作り」自体がおかしかった、という訳です。この時点で、「いい準備」が、いかにできていなかったか、ということです。

 

 

 尤も、現代表。誰が指揮官であろうとも、「本田、香川、長友、篤人(内田のこと)」の「4人組」が、否が応でも中心になろうとは、思うのです。

 そうであれば、「4人組」それぞれが最大限に生き得て、かつ、日本人選手としての「相対的特徴」が最大限に生き得る、その「最大公約数」を落とし込む、見出すスタイル、戦術の構築が、絶対不可欠であったように思うのです。

 

 

 (図解5)自分(愛球人)が考える、現代表が2014年W杯に向けて採って欲しかった基本布陣。

 

 (1)「4-3-3」。

 

               千真orハーフナーor岡崎or寿人

 

 香川                                        本田

 

             柏木             長谷部or高橋秀

 

                     細貝

 

 長友          闘莉王            遠藤航or岩波         篤人

 

                     川島

 

 

 ベンチ(元気or宇佐美or柿谷or大前or大久保[から2人]、槙野、森重or村松、大田宏or下平、西川、権田or菅野)

 

 

 イメージするのは、両WGは、実質的には「ダブルファンタジスタ」の役割です。

 共に実質的には、「OH兼SS(セカンドストライカー)」であるので、ということは、3人のMFは、実質的には「トリボーテ(3センターハーフ)」となります。

 特に、高い位置での2人のMF(柏木、長谷部)。両WGが中央に絞りたがるため、中央でもサイドでも、そして攻撃的にも守備的にも振る舞えて、「運動量、スピード、ボール奪取力、サッカーIQ、長短のパスセンス」を、高次元で兼備することが求められます。そうであれば、特に、柏木(MFならば基本的にどこでも対応可能)は、重要な存在になり得ていたと思う訳です(むしろ、自分が指揮官ならば、軸に近い存在にしていたと思う。チームを鼓舞することもできるし)。

 

 アンカーも然り。両SBは、卓越する運動量とスピードの持ち主であり、貴重な「ワールドクラス」でありますから、できれば、WBに近い感じでプレーさせてあげたい。そうであれば、局面に応じて、時として「フォアリべロ」的な役割を担わせることが重要。そう考えると、細貝は、重要な存在になり得たように思うのです。

 

 

 (2)「3-4-3」。

 

               千真orハーフナーor岡崎or寿人

 

         香川                       本田

 

 長友                                        篤人

 

             柏木             細貝or長谷部

 

       岩波or森重         闘莉王      遠藤航or森重

 

                     川島

 

 

 いま、「3-4-3」も、一案では、と示してみました。

 そう。篤人、長友、いずれも、むしろWBとしてのほうが輝けるのでは、ということに照らしてです。

 それにこの布陣だと、特に、12年夏以後、(特にスピード面で)衰えの傾向があった闘莉王でも、リべロ的役割に徹させれば、フルに能力を発揮させ得るはず、と。

 

 ちなみにFWですが、例えば、

 

 「万能性を求める→千真(渡辺千のこと)。

 高さ、基準点、パワープレー、守備意識→ハーフナー。

 裏への飛び出し、前線からの守備→岡崎。

 点で合わせる、裏への飛び出し、足下でのポスト→寿人。」

 

 というように、対戦相手や選手の調子、局面等に応じて使い分ける。これが、主たるイメージとしてありました。

 

 

 いずれにせよ、「チーム作り」としてなっていなかった。これが、大きな要素としてあるのですが(百歩譲っても、それでも、柏木は、本田及び遠藤の代役として、質の高いプレイができる選手と自分は思うんだけどなあ)、「強化面」でも、ミステイクがあった、と思っています。

 

 

 (図解6)サッカー日本代表、2014年W杯に向けて、ラスト1年、どのように強化すべきだったのか。

 

 (1)2013年8月    ウルグアイ(H)(これはこれでよい。東北で開催すること、それ自体に意味がある。)

 (2)2013年9月    ポルトガル(A)(欧州対策、3トップ対策、現時点での立ち位置を知る意味。ポルトガルと10日に試合を組み得る日程であったので、トライする価値はある。だめならばモンテネグロ。)

 (3)2013年10月   南アフリカ(H)(アフリカ対策。最終予選に進めなかったチームがターゲット。何故ならばほぼベスメンできてくれるから。前回W杯出場で、地力はあると思うのでここを推してみたが、モロッコ、マリ、ガボン、ザンビアとかも候補といえよう。)

 (4)2013年10月   エルサルバドル(H)(北中米の国とする。最終予選に進めなかったチームがターゲット。カナダ、グアテマラでもOK。この10月シリーズを、「選手、戦術のレパートリー向上(底上げ)」に充てる。)

 (5)2013年11月   ブラジル(A)(とにかくブラジルの気候に慣れる。勿論その時点でのベスメンで勝負。)

 (6)2013年11月   アルゼンチンorチリ(AorN)(南米勢対策。場所はできればブラジルで。ここで、本大会に向けた課題をあぶり出す。)

 (EX1)2014年1月  国内組直前合宿(3週間程度)。

 (7)2014年2月上旬  米国(A)(合宿の成果の場とする。内容重視。使える選手を増やせる手ごたえをつかむことが重要。)

 (8)2014年2月上旬  エクアドル(N)(ここも米国戦とテイストは同じ。Nとは米国のどこか。南米勢対策の意味合いもある。)

 (9)2014年3月    アルジェリアorカメルーン(HorN)(とにかく初戦、コートジボワール戦に合わせること。ならばやるべきことは、アフリカ勢対策。ただしこの場合、選手の底上げ、最終テストの場にできるだけ充てる。軸となる選手はあえて呼ばない。)

 (10)壮行試合      アフリカ勢(H)(できれば、最終予選で敗北したチームが理想。ブルキナファソ、セネガルをイメージ。ここが最後の強化試合。そこからすぐにブラジルに乗り込み、後は完全練習非公開、試合は地元チームとの練習試合程度でOK[故障が最も怖いので。そして、戦術レパートリー向上に時間を割けるようにするため]。)

 

 

 そう。アジア勢の場合、基本的には、他国に比べて、W杯本大会に向けて、充分な時間(およそ1年近く)が与えられているんですよね。他国(特に、欧州、南米、アフリカ)だと、11月&3月、しかも海外組主体という訳で、実質「3試合+α」しか準備時間がない。

 それに比して考えれば、充分底上げの時間が与えられていたはず。というか、自分にいわせれば、

 

 「あなたがた(アジア勢)は、『個』の力が相対的に弱いのだから、『個』を補うには『組織』を高めることが重要になる。それに照らして考えても、他国よりも充分な時間を与えるから、アドバンテージを最大限に使いましょうね。」

 

 そのように、自分は解釈しているんですよね。でも、「現状を知る」と「レパートリーを増やす」の「プラスのサイクル」を、充分にできなかった。これが大きかったように、自分は思っているのです。

 

 

 それで、W杯本大会。

 

 今回の場合、組分け的には、それなりに「勝機はある」組ではあった、と思うのです。

 ですが、それは、あくまでも、「第1戦に勝つ」、つまり、「コートジボワール戦」に照準を合わせる、これがすべてといってよかった。

 

 先述したように、日本は、「個」の力では、どうしても弱いのです。そうであれば、なおさら、初戦に照準を合わせる、いや、「ヤマを張る」くらいのことが必要だった、と自分は思うのです。

 

 「チーム作り」の方向性が、うまくいっているようには、自分には思えなかった。そうであれば、なおさら、年明け以後のおよそ半年を、「コートジボワール戦に勝つ」、それのみに全神経を集中させてもよかったのでは、と自分は思うのです(それであとは、残った燃料にすがること。その意味でも、やはり、年明けの国内組長期合宿を組まなかったことは、大きなマイナスであったと思いますが…)。

 

 

 で、試合。ここで、気に掛かるデータがあります。

 コートジボワール戦、ギリシャ戦。6月28日に、NHKBS1にて、再放送の機会があったので、改めて見返して、メモ書きしていました。

 自分の場合、「決定機、仕掛け、数的有利」の3つの要素を、重要視しています。それが、下記のデータ。

 

 

 (図解7)コートジボワール戦、ギリシャ戦、「決定機、仕掛け、数的有利」(左側が日本)。

 

 (1)コートジボワール戦(「11、12、9」対「22、25、14」)。

 (2)ギリシャ戦(「22、18、14」対「13、9、4」)。

 

 

 ギリシャ戦は、38分に、相手に1人退場者が出ていたエクスキューズを考慮せねばなりませんが(だから日本の方が決定機とかが多いのはある種当然ではある)。

 それにしても、です。この、第1戦。決定機、仕掛けで、相手の方がダブルスコアの数値。数的有利も、日本は、「10」にさえ満たない有様です。これでは勝てる訳がない、と(というか、勝っちゃいけないでしょ、みたいな)。

 

 メモ書きすると、いくつかのことに、気付かされます。

 

 

 (図解8)W杯本大会における、日本代表の「戦術的問題点」。

 

 (1)どこでボールを奪うかの「意思統一」の乏しさ。例えば、ハーフウェーラインまでにボールを奪って、そこから一気に敵陣に攻め込むとかの、「ビジョン」の乏しさを感じた。

 (2)「トライアングル」がほとんどない。数的有利を作れても、ほとんどの場合が「2対1」にとどまり、「3人目の動き」に乏しいから、パスコースを読まれやすい。また、「パス&ムーブ」の意識も希薄で、それをも含めて、動きが、相手にすれば「読みやすかった」。これでは「いい攻撃」を生み出しにくい。

 (3)「パススピード」のテンポがいつも一緒。しかもほとんどが遅攻。速攻にして、ようやく他国と同等程度のパススピードなのに、遅攻主体では、相手に守備陣形を形成されやすい(攻撃の変化に乏しい、ともいえる)。また、ロングボール、サイドチェンジも少なく、結局、「引いた相手を崩す」状態を、ほぼ常に余儀なくされているようなもの。

 (4)「引いた相手を崩す」状態を多く作らされているのに(ギリシャ戦はともかく、コートジボワール戦はほぼ自業自得かと思うが)、例えば、バスケでいうドライブ、ぺネトレイトのような、「強引な突破」で切り裂きにかかって、ファウルをもらう(FK、PK狙い)プレイがまるでない。「パスワーク自己目的化サッカー」のつけが、肝心な場面で出た感じ。

 (5)トラップミスの多さ。基本的なボールスキルは水準以上なのだが、ボールを「収める」質の乏しさで、決定機を逃す場面が少なくなかった。

 (6)「トランジション(攻守の切り替え)」の意識の乏しさ。「できるだけ高い位置でボールを奪う」「相手守備の陣形が整う前に一気に決定機創出」の意識の乏しさと連動し得るが、フィジカルコンタクトで劣るのに、トランジションができなければ、数的有利も決定機創出もやりようがない。

 (7)「ゴールに向かう気持ち」が希薄だったこと。サッカーは「シュートゲーム」、という解釈があるが、まさしくそれで、得点を取ってこそなんぼなのだ。バスケにおける「リングに向かう気持ち」とまさしく同義。しかし日本は、その主目的が、「得点を決める」ではなくて、「パスワーク」にばかり向いていた(仕掛け、トライアングル、流動性、トランジションの乏しさも、つまるところ個の帰結なのかな、と)。

 (8)守備における、「川島(GK)依存」の悪癖が最後まで治らず。これではいくら川島が有能なGKでも、ガタがくるのはやむなしだったかと(ただし失点自体は、GKの責任は全くなかったと自分は解釈するが)。

 (9)結局、「チームを鼓舞できる選手」がいなかった。長谷部は確かに、人間としては好感かもしれないが、「お前らしっかりやれ!」という感じの選手ではない。やはり、闘莉王、槙野、寿人、柏木といった選手のいずれか1~2にんを、「チームを鼓舞できる存在」としてベンチに入れるべきであったのでは、と思うが(どうしても闘莉王を組み込みたくなければ、攻めて槙野は組み込むべきだったかと)。

 

 

 このように、挙げればきりがありません。いずれにせよ、「負けるべくして負けた」、これだけは、はっきりといえることでしょうし、

 

 

 「何もかも間違っていた。」

 

 

 結局、この言葉に収斂されるのかな、と。

 例えば、コートジボワール戦。「最初の15~20分間が勝負」とは、わかりきっていたはずで、確かに先制点は決めましたが、「飛ばして入る(フルパワーで入る)」、これが必要だったと思うのです。しかし、現実は、「慎重すぎるほど受動的だった」。

 それでも、後半の最初の15分間(ドログバ投入前)。このとき、日本は押し込んでいました。ここで、2点目を取れていたら、もっと違った結末になっていたかもしれません(相手を焦らせられたかもしれない)。しかし、できなかった。

 

 「入り方の失敗」「押し込んでいる時間帯で、2点目を取れなかった」。

 そして、特に2失点目。「ジェルビーニョをドフリーにした」。これでは、勝てるはずもないでしょう。

 

 今季のジェルビーニョ。セリエAでは(所属チームはローマ)、彼を1対1で止められるSB、WBは、「誰1人としていなかった」、そう自分は解釈しています。それほどに、キャリア最高の状態で迎えていた。

 そのような選手を、ドフリーにする。どうぞ決めてください、と言っているようなものです。それこそ、粘着ディフェンス(NBAのスパーズのような感じの)、あるいは、ダブルチーム(1対2での守備)を徹底するくらいでなければならなかったのに、それができなかった、いや、怠った。それがすべてでしょう、と。

 

 結局のところ、「中央に本田、左に香川」。これに拘ったこと、それ自体が失敗(間違い)であったと思いますし、やはり、ジェルビーニョ対策をも踏まえて考えれば、「トリボーテ(4-3-3)」か、「4-4-1-1(かつて、デルネーリ時代のサンプドリアが成功させた戦術。本田を完全フリーロールにできるメリットがあるが、その分、香川はベンチスタートになる)」とかで入った方が良かったのではないか、自分はそう思うのです。

 

 明らかに、コートジボワールに(丸裸)にされていた感じですが、あの「23人枠」の時点で、「4-2-3-1」「戦術≒本田」でいきますよ、と宣言していたようなもので、「どうぞ対策してください」と言っていたようなものです。まさしく、「身から出た錆」「自業自得」と思う訳です。

 

 

 ですが、こうも思うのです。もしも、守備重視で取り組んで、1勝でもしてしまっていたら、それはそれで、「勘違い」をしてしまっていたのではないかな、と。

 ですから、(攻撃重視、それ自体は望ましい感じではあるかもだが、)今回、「戦術≒本田」ありきでチーム作りをした(そして守備、特にCBの質の拙さをなおざりにした)、はっきり述べれば、アプローチが間違っていた(特に、遠藤、今野を切らなかったことは、大きなミステイクと思う。とりわけ遠藤は、もはや走れなくなっており、攻撃テンポをスローダウンさせるだけの存在に成り下がっていた)。

 根本的に間違ったアプローチ(過程)に対して、「1分け2敗」という結果。そう、サッカーの神様は、やはりちゃんと見ていたのだ、と(個人的には、ギリシャ戦、60分くらいでの、「4連続CK」を喫した場面で、ギリシャに仕留めて欲しかったくらいである。だからなおさら、「勝ち点1を獲得してしまって世界に申し訳ない」が正直な気持ち)。

 

 

 だから、「負けてよかった」と正直思うのです。一体感を感じられず、意思統一が伝わらず、ピッチ上に描こうとするデザインを示せず。

 あるいは、「戦術≒本田」。「10番ありき」は、個人的にはむしろ肯定的ではあるのです。例えばアルゼンチンやイタリアは、それを先述レパートリーとして長く積極的に活用してきていますし。

 ですが、本田の「何」を最大限に生かしたかったのか(恐らく「キープ力、創造性」と思われるが、確信は持てぬまま終わった)、見えてこなかったですし、本田は、今回のチーム作りでだと、「テクニック型」というよりも、むしろ、「パワー型」として解釈されていたのではないか、だから、いつしか「代役不在」になってしまったのではないか、と思うのです。

 

 Jをも含めて、パワーでも勝負し得る「10番」は、本田以外でだと、柏木くらいしか見当たらないのが現状で(だから自分は「23人枠」に柏木が必要だったと強く抱いている。攻撃に変化を付けられるし、何よりも「パス&ムーブ」「トライアングル」「トランジション」では、柏木の高い「サッカーIQ」が最大限に生かされ得るから)、しかし頑なに組み込もうとせず、と。

 

 かといって、「トリボーテ」をレパートリーとして積極的に組み込もうともせず、篤人&長友を最大限に生かすための「3バック」も、結局レパートリー化できなかった。

 「いい準備」ができなければ、勝てるはずもないこと。それを「教訓」として学べたこと(一体感の構築をも含めて。たとえ個の力に多少劣ろうとも、「鼓舞できる選手」がいかに必要であるか、とも)。だから、「負けてよかった」と感じるのです。

 

 

 ですが、大切なことは、この「惨敗」を、いつの日か、「あの敗北があったから、いまの輝きがある」と思えるようにできるか、ということ。そのためには、それ相応の覚悟、時間、労力g、必要になってくる、と思われる訳です。

 

 

 では、(その4)において、「サッカー日本代表、今後志向すべき方向性としての処方箋。」ということの具体的考察を、させて頂きたく思います。

 

 

 という訳で、長い文章になりますので、続きを(その4)にて記します。

 何卒、最後まで御拝読して頂けると、とても有難く思います。

 

 よろしく御願い申し上げます。