「サッカー日本代表、2014年ブラジルW杯検証的総括、及び、今後に向けての具体的提言(その4。今後志向すべき方向性としての処方箋)。」

 こんにちは。愛球人と申します。

 

 「愛球人ホームページ。」、第45回のブログエントリーの論題は、「サッカー日本代表、2014年ブラジルW杯検証的総括、及び、今後に向けての具体的提言。」です。

 

 実質的には、ブログエントリーの本論の44回目になります。そして、サッカーブログエントリーの7回目になります。

 

 では、(その3)の続きから、考察を始めます。

 

 

 「負けるべくして負けた。何もかもが、間違っていた。しかし、負けてよかった、とも強く抱く。だからこそ、大切なことは、この完敗を、負けたことに終わらせず、今後に結び付き得る敗北にしなければならない。」

 

 

 このことが、(その3)までで自分が伝えたかったこととしてあります。

 

 なんというか、日本の場合、「ピッチ上に描こうとするデザインが、根本的に街っていた」、と自分は解釈していますが、これは、「日本サッカーとしての不変のスタイル」というか、「苦しいときに立ち返るべき場所」を、持てていなかったように、自分は思うんですよね。

 どういうことか。これを、他国のサッカーに照らし合わせながら、考察したいと思います。

 

 

 今大会の場合、個人的に、印象に残ったチーム、いくつか挙げます。

 (いわゆる「八大国」は、別枠扱いとここではみなします。)

 

 

 (図解9)自分(愛球人)が考える、2014年W杯、印象に残ったチーム。

 

 (1)コスタリカ(意思統一された、「5バック」に近い「3バック」。精緻なラインコントロール[オフサイドトラップ]、トランジションが特筆。5バックでも決して守備的ではない[後ろ向きな姿勢ではない、というニュアンス。「機能美」さえ覚える]ことを実証した。3トップが快足だからこそできる、とも解釈し得るが、だからこそより興味深い。)

 (2)米国(「全員攻撃全員守備」が徹底されていた。どこでボールを奪うか、どこが勝負どころか、そしてトランジション。全員が「闘う姿勢」を感じ、〈同じ方向を向く〉感じがして、強く共感できた。)

 (3)チリ、メキシコ(いずれも、「5バック」を厭わない「3バック」。「全員攻撃全員守備」の姿勢が徹底されており、トランジションの素早さ、どこでボールを奪うかの意思統一、長短のパスの使い分け、日本が見習い得るところが多くあるかと。)

 (4)アルジェリア(流れるようなパスワークに、効果的な仕掛け[個人突破]が織り交ぜられており、そして、「数的有利」の姿勢が徹底されている。特にブライミ。小さい身体だが、それを逆にうまく活用していて、日本人選手が見習い得るところが多くありそう。)

 

 

 他にも、心に強く響くチームはいくつもありますが、上記に挙げた5チームは、実質的な実力差(少なくとも、机上の意味での)は、日本とさほどないはずなのに、いわゆる「八大国」と質的な意味で匹敵、肉薄の領域まできている。それで、敬意をも籠めて、挙げさせて頂きました。

 

 それを象徴するのが、決勝T(16強の時点から)。

 日本の場合、「どこでボールを奪うかの意思統一が伝わらない(つまり、「同じ方向を向く」ができていない)」「パススピードが遅い、しかもテンポも同じ(ほとんどワンパターン)」「数的有利、仕掛けの意識が低い。流動性、連動性に乏しい(故に相手は守備しやすい)」、等といったことが挙げられます。

 

 果てには(ある意味、これが最も深刻とも思うのですが)、ハメス・ロドリゲス(コロンビア戦。相手の絶対的「ナンバー10」)1人に、つまり、「単独個人」に、「ふるぼっこ(粉砕)」されたこと。

 例えば06年(ブラジル戦の「1対4」等)ならば、「単純に力の差があったからだよ。」との言葉で済まされ得るのでしょうが、「個」の力のみならず、「組織」すらも、事実上全否定されたこと。その意味で、とても深刻であるように、自分は思うんですよね。

 

 

 なんというか、今回のW杯の決勝T。

 もう、「パススピード」「トランジション」「ゴールに向かう気持ち」、これらのことが(もはや、あらゆる要素で、といってよいでしょうが)、日本と世界(先述にて示した5か国をも含みます)とでは、全然質が違う、これでは勝てるはずもない…、と実感させられたんですよね。

 

 尤も、今回のW杯。C(「八大国」が存在しない)、H(Cと同じ理由)、F(典型的な「1強3弱」)、この3つならば、勝機はあるかな、という感じでは、目されてきました。そして興味深いのは、アジア勢は、日本が「C」、韓国が「H」、イランが「F」と、4つのうち3つが、いわゆる「勝機のある組」であったことです。

 

 

 今回の場合、目の当たりにする現実が、「アジア勢が1勝もできなかったこと(3分け9敗)」です。

 そして、アジア勢と世界との間には、想像以上に大きな「力の差(落差)」があることが、浮き彫りになった、といわれています。

 

 

 (図解10)今回のW杯における、アジア勢の内容。

 

 豪州(B。3戦全敗。ただしこれは、「組分けのえげつなさ」「根本的に再建チームであること(世代交代に失敗して、ドラスティックな入れ替えをせざるを得なかった)」というエクスキューズを考慮する必要があるし、スペイン戦こそ粉砕された感があるが、チリ、オランダに対しては、内容的にも互角に渡り合い、意思統一[特に、全員攻撃全員守備]が感じられた。その意味で、決して悲観する必要はないかと。)

 イラン(F。1分け2敗。守備の局面での質の高さが伝わり、その意味で収穫は大きいとはいえるが、攻撃の、ラストの局面でのアイデアの乏しさに泣いた感あり。とはいえ、「方向性は間違っていない」、いまできるベストは尽くしたといえる感じなので、下を向くことはないかと。)

 韓国(H。1分け2敗。日本ほどではないかもにせよ、特にアルジェリア戦での「内容的完敗」は衝撃だった。孫興民[レーバーク―ゼン]、具滋哲[マインツ]は、対等に戦えていたが、裏を返せば収穫はそれくらいで[力の差、現実を知ったことが収穫かもだが]、両CBのスピード不足、右SBのクオリティーの乏しさ、ここは根本的にメスを入れる必要ありかと。)

 日本(C。1分け2敗。[その3]までに先述したので、ここでは多くは触れません。)

 

 

 正直、W杯本大会(2018年W杯)においての、「アジア枠」が、「3」に減枠されても(それ以上の減枠は勘弁して欲しいし、やりすぎだろうとは思いますが)、質の担保に照らせば、「やむなし」だろうなあ、とは思うんですよね。

 尤も、本当に「3」に減枠されれば、W杯本大会出場が、確信が持てなくなりますが、その方が危機感を持てて、むしろ良いのかもしれません(そしていずれ、「4」枠確保への復権を目指していくのがベターなのかな、と)。

 

 

 で、興味深いのが、「八大国」の一角、オランダ。今回のW杯では、4強入りしました。

 このオランダの戦術。「ステーションスキップ」。

 なにかというと、DFラインから、前線の3トップ(ロッベン、ファンペルシ、スナイデル)へと、一気にロングボールを蹴り込んで、後は3人(特にロッベン、ファンペルシ)の快足に委ねる(GKとの1対1に持ち込む)、という戦術です。

 

 これは衝撃でした。オランダといえば、「4-3-3」「3-3-1-3」のいずれであれ、「3トップ絶対主義」(ちなみに自分も、3トップはもともと信奉しているといってよいほど、大好きです)。そして、「超攻撃型」を、ほぼ貫いてきた(勿論指揮官や選手によって、程度の差はありますが)。

 それが、です。なんと、「5バック」を厭わない「3バック」。布陣図表記的には、「3-4-1-2(スナイデルがトップ下となる)、または「5-3-2」。

 

 確かに、ストロートマン、ファンデルファールトが負傷離脱、ロッベンに続くWGがなかなか思うように育たない(特にバベル、ナルシンフの伸び悩みが大きいかと…)、そういった事情が背景にあったと思われますが、それでも、こうもばっさりと割り切るとは…、と。正直、びっくりしました。

 

 しかも、です。布陣図上だけだと、「守備的」に映りますが、実際にやると、決して守備的ではない。やりようによっては、「攻撃的」にさえなる。特にスペイン戦、ブラジル戦。圧巻とさえ思いました。

 でも、何故それができるのか、といえば、「3トップ」という、「立ち返れる場所」があるからだ、とも思うんですよね。この、「立ち返れる場所(不変のスタイル)」が、日本にはなかった。これは悔しいですが、否めないでしょう。

 

 

 でも、日本も、思えば、U23.2012年ロンドン五輪。「戦術≒永井」で、4強入りを叶えました。

 このとき、自分は当時、批判的でした。でも、こうも思っていたのです。

 「納得はしたくないが、いまの日本で、勝利の可能性を高めるためには、ベターな方法なんだろうなあ。」と。

 

 そう。「ステーションスキップ」。日本も、U23で、これを実践していた訳です。

 今大会でも、先述の5か国のうち、アルジェリアは韓国戦で、4得点のうち2得点を、メジャ二(本来はCBだが、代表ではアンカーだった)からのロングボールで、仕留めていますし、チリ、メキシコも、これを少なからず用いていました。

 

 ロングボールはつまらない、という解釈が、日本では少なくないように映りますが、後述にて触れられればと思いますが、日本の場合、まず、「前線からの高い位置での守備」なくして、トランジション(攻守の切り替え)も、決定機創出も難しい。しかし、いつも高い位置でボール奪取できる訳でもありません(一つのイメージとして、ハーフウェーライン。だめでも自陣サード)。

 そうであれば、思い切って、ゴール前まで後退しつつ(ただしできれば、遅らせる、「ディレイ」的な感じの方がよい)、ボールを奪取したら、一気に一発で展開できる感じが望ましい。

 

 そうであれば、特にDF(CB)に求められるのは、ロングボールの技術(足下の技術、パスセンス。そしてプレービジョン、サッカーIQ)。で、攻撃面で少ない人数で仕留め得るためには、FWは、快足(あるいはボールスキルに卓越する)であることが望ましい(そして、前線からの守備意識も重要)、となる。

 

 その意味で、「戦術≒永井」は、確かに理に叶っている訳ですし、今回のW杯、CFに大迫というのは、正直、ミスチョイスだったように、自分は思うんですよね(ボールスキルは、確かにうまいのですが…)。

 

 

 今回のW杯で、特徴的なことの一つとして、「WGとして出発した選手を、2トップの一角で起用する」がありました。これは、チェルチ(イタリア代表。トリノ)の成功があったからでは、と自分は解釈しています。

 今回のW杯でならば、ロッベン(オランダ)、ドスサントス(メキシコ)、A・サンチェス(チリ)等が、これに該当し得るでしょう。

 

 これは個人的には、とても興味深い感じではあるのです。何故って、ある種示唆的な感じな訳でして、できるだけスピード感に満ちる攻撃をやろうと思えば、快足FWの方が望ましい、となる。

 で、3トップのWGも、2トップのSSも、考えてみれば、「スモール型」が求められる傾向がもともと強い(傾向が強い、だけで、もちろん例外も少なからずありますが)。だから、適応性も結構起こり得るのかな、と。

 

 興味深い、と述べたのは、日本でも、例えば元気(原口のこと。浦和→ヘルタベルリン)は、もともとは、3トップの左WGでキャリアをスタートさせました。でも、その後、CF(1トップ)に挑戦。これについては、評価が分かれるかもですが、その後、直近1年半は、1.5列目、つまり、SS的な役割を主戦場としてきました。

 で、今季は、キャリア最高のパフォーマンス(だからこそ、「23人枠」に呼んで欲しかったのですが…)。今夏移籍することになった、ベルリンでは、3トップの左が最有力視されているようですが、今後、代表で、2トップの一角や1トップを張らせても、適応し得るでしょう。

 

 似たようなことは、宇佐美、柿谷とかにもいえますし(現に柿谷は、昨季CFで成功を収めた。宇佐美も2トップの一角という居場所を確立した感がある)、U23での永井も、もともとWGでしたが、代表ではCFとして成功しました(ただ、今季の名古屋では苦しんでいますが…)。

 

 

 そのように考えると、今後の日本が目指すべき方向性として、やはり、「スピード感ある攻撃の確立」、これが求められるように思うんですよね。それでやっと、世界と同等の立場、同じ土俵に立てる、と考えられることに照らしても。

 

 それと、「前線からの守備」「DFラインからの組み立て」(勿論、局面に応じて、「ステーションスキップ」も)も然り。そう考えると、「全員攻撃全員守備」となるように思うのです。

 この、「全員攻撃全員守備」。これこそが、今後日本が進むべき方向性になるのかな、と。およその概論としては、ですけど。

 

 

 ちなみに、考えさせられることを、下記に2つ貼り付けておきます。

 

 

 (図解11)2014年W杯、チリ代表、帰国時の国民の熱狂ぶり。

 (1)http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1407/04/news119.html

 (2)http://qoly.jp/2014/07/01/recepcion-seleccion-chile-en-la-moneda

 

 

 (図解12)2014年W杯、準決勝、ブラジル対ドイツ、1対7(ミネイロンの惨劇)、データ的考察。

http://www.goal.com/jp/news/5256/2014%E5%B9%B4w%E6%9D%AF/2014/07/10/4948641/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0%E7%8E%8B%E5%9B%BD%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%AB%E3%81%AB%E4%BD%95%E3%81%8C%E8%B5%B7%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B?ICID=HP_FA_5

 

 

 では、(その5)において、「サッカー日本代表、日本サッカー界として、4年後は勿論、12~20年後のためをも含めて、どうあって欲しいか。」ということの具体的考察を、させて頂きたく思います。

 

 

 という訳で、長い文章になりますので、続きを(その5)にて記します。

 何卒、最後まで御拝読して頂けると、とても有難く思います。

 

 よろしく御願い申し上げます。